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富山地方裁判所 昭和56年(わ)47号 判決

本籍

富山市堤町通り一丁目二番地の三四

住居

同市窪新町七番三三号

会社役員

江端久芳

昭和一八年七月一三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官亀井富士雄出席の上審理を逐げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月及び罰金六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、富山市曙町九番一号に本店を置き、家具類の委託販売等を業とする有限会社富山県流通販売センターの代表取締役として同社の業務全般を統括する傍ら、特定の資金需要者に対し金銭を貸しつけ金利を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一  昭和五二年分の実際所得金額は二、二二〇万六、〇六二円、これに対する所得税額は七八〇万七、八〇〇円であるのに、貸金から生じた利息の一部を架空人名義の定期積金に蓄積するなどの不正手段によりその所得を秘匿したうえ、同年分所得税の申告期限である同五三年三月一五日までに、同市丸の内一丁目五番一三号所在富山税務署長に対し、昭和五二年分所得税確定申告書を提出せず、前記実際所得金額中貸金から生じた利息等の雑所得二、一〇九万六、〇六二円に対する所得税七二〇万三、〇〇〇円を免れ、

第二  昭和五三年分の実際所得金額は四、七四八万二、八六八円、これに対する所得税額は二、二五六万八、〇〇〇円であるのに、貸金から生じた利息の一部を架空人名義の定期積金及び定期預金に蓄積するなどの不正手段によりその所得の一部を秘匿したうえ、同五四年三月一五日、前記富山税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一六八万一、二一四円、これに対する所得税額七万二、四〇〇円である旨の虚偽過少の昭和五三年分所得税確定申告書を提出し、正規所得税額二、二五六万八、〇〇〇円との差額二、二四九万五、六〇〇円を免れ、

第三  昭和五四年分の実際所得金額は二、二〇七万三、三六八円、これに対する所得税額は五三七万二、二〇〇円であるのに、貸金から生じた利息の一部を架空人名義の定期積金及び定期預金に蓄積するなどの不正手段によりその所得を秘匿したうえ、同年分所得税の申告期限である同五五年三月一五日までに、前記富山税務署長に対し、昭和五四年分所得税確定申告書を提出せず、前記実際所得金額中の前記第一記載同様の雑所得、定期預金に対する利子所得及び不動産譲渡による短期譲渡所得の合計二、〇五七万八、三六八円に対する所得税四五六万五、六〇〇円を免れ、

もって、それぞれ偽りその他不正の行為により右各年における前記各所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人作成の上申書三通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書四通

一  上野照夫、厚村清和の検察官に対する各供述調書

一  上野照夫の大蔵事務官に対する質問てん末書(請求番号33ないし38)六通

一  南保博、厚村清和の各供述書

一  篠田隆一郎作成の確認書

一  大蔵事務官竹下照夫作成の各年分の実際所得金額及び申告納税額についてと題する書面

一  大蔵事務官竹下照夫作成の修正損益計算書についてと題する書面

一  大蔵事務官作成の昭和五五年一〇月一八日付、同年一一月七日付、同年一一月二一日付、同年一一月二二日付(二通)、昭和五六年一月七日付(請求番号21)、同年一月一〇日付、同年一月一二日付(二通)、同年一月一四日付(四通)、同年一月一六日付の査察事件調査事績報告書

一  登記官笠原昭一作成の登記簿謄本

一  押収してある連絡メモ等一綴(昭和五六年押第二二号の一)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官山元肇作成の昭和五六年二月二〇日作成の脱税額計算書(請求番号2)

一  大蔵事務官立田義一作成の証明書(請求番号6)

判示第二の事実について

一  上野照夫の大蔵事務官に対する質問てん末書(請求番号39)

一  山崎与七の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の昭和五六年一月七日付査察事件調査事績報告書(請求番号25)

一  大蔵事務官山元肇作成の同年二月二〇日付脱税額計算書(請求番号3)

一  大蔵事務官立田義一作成の証明書(請求番号7)

一  押収してある土地建物売買契約書一通(同号の二)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の昭和五六年一月一三日付査察事件調査事績報告書

一  川口実の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官山元肇作成の昭和五六年二月二〇日付脱税額計算書(請求番号4)

一  大蔵事務官立田義一作成の証明書(請求番号8)

(法令の適用)

被告人の判示第一ないし第三の各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、以上の各罪についていずれも懲役と罰金を併科し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪の罰金額を合算しその刑期及び金額の範囲内で量刑を考えるに、本件犯行の不正手段の態様、逋脱税額、税に対する認識の程度、罪証隠滅の状況並びに犯行後の事情等にかんがみ、被告人を懲役八月及び罰金六〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 大山貞雄)

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